【技術情報】二軸押出機における運転条件の実務的整理|テクノベル
二軸押出機のエネルギー投入メカニズムとは?
二軸押出機を扱っていると、同じ材料でも「回転数を少し上げただけで急に樹脂温度が上がる」「吐出量を増やした途端に混ざり方が変わる」といった現象によく出会います。現場では当たり前に起きていることですが、改めて整理すると、二軸押出機は「材料へどのようにエネルギーを与えるか」を設計している装置だと言えます。
そのエネルギーはヒーター加熱だけではありません。スクリュ回転による機械的エネルギーも同時に作用しながら、溶融と混練が進みます。つまり押出では、材料へ投入される総エネルギーを、機械的エネルギーと熱エネルギーに切り分けて考える必要があります。ここでは、それぞれを説明します。
機械的エネルギー入力
主としてスクリュ回転数によって決定され、せん断応力/せん断ひずみとして材料に伝達される熱量。
熱エネルギー入力
バレルおよび金型の温度設定により、外部から供給される熱量。
二軸押出機では、材料投入後の搬送部(フィード〜溶融初期)はバレルからの外部熱が支配的で、溶融が始まります。一方、混練部ではスクリュエレメント間およびスクリュ・バレル間のせん断応力に起因する機械的エネルギーが支配的になり、溶融・分散分配・混練が進みます。特に同方向回転・完全噛合型では、スクリュ間のワイピング効果で高頻度にせん断流動場へさらされるため、機械的エネルギーの伝達効率が高くなります。
二軸押出プロセス特性を決定する二つの設計条件
二軸押出機のプロセスは、機械仕様で決まる条件と、運転中に調整できる条件の両方で成り立っています。変数を整理するため、少し聞き慣れない表現ですが、前者を「構造変数」、後者を「操作変数」と呼びます。構造変数は装置仕様として事前に決まるハード面の条件で、スクリュ径、L/D、スクリュフォーメーションなどが代表例です。操作変数は運転中に変更できるソフト面の条件で、スクリュ回転数、吐出量、バレル温度設定などがこれにあたります。
実際のプロセスは、この二つの組み合わせで形成されます。同じ回転数でも、スクリュ構成やL/Dが変われば、材料が受けるせん断履歴や滞留状態は大きく変わります。逆に同じ機械構成でも、回転数や投入量を変えるだけで、樹脂温度や圧力の挙動は大きく変わります。
構造変数:二軸押出機における機械設計要素
スクリュ径(D)および L/D 比
スクリュ径は、押出機の処理能力を主として左右する構造変数であり、L/D 比は押出プロセスにおける有効プロセス長を決定します。一方、スクリュ径は材料に付与されるせん断速度に直接的な影響を与えるため、スケールアップに際しては、機械的エネルギー入力の増加および材料温度上昇挙動に対して、気を付けなければなりません。
スクリュフォーメーション
スクリュフォーメーションは、材料に与えられるせん断流動場や伸長流動場を直接的に形成する要素として、二軸押出機の性能を決定づける重要な設計要素です。フライトエレメントによる材料搬送、ニーディングエレメントによる溶融促進や混練、圧力形成、ミキシングエレメントによる流動の分割・再結合といった各機能を段階的に配置することで、材料特性や押出プロセスの目的に応じた混練強度の設計が可能となります。
付帯装置をはじめとした装置構成
フィーダー、サイドフィーダーやベントポート、ギヤポンプ等の付帯装置の配置は、材料投入の位置およびタイミング、圧力形成、揮発分除去挙動に影響を与えます。
操作変数:二軸押出プロセスにおける運転条件
スクリュ回転数(rpm)
スクリュ回転数は、材料に付与されるせん断速度に直接的な影響を与えます。
材料投入量(材料吐出量)(kg/h)
材料投入量は、スクリュ溝内の充満状態を決定する基本的な変数であり、充満率の変化を通じて、せん断応力や圧力勾配などに影響します。
バレル・金型温度設定(℃)
バレル温度は、材料の溶融開始および溶融進行を制御するために設定される外部熱エネルギーの入力条件と考えられ、機械的せん断に起因するエネルギー入力と並んで、二軸押出プロセスにおける材料の温度上昇挙動および熱履歴へ影響を与える要因です。
プロセス結果として評価される指標
操作変数と構造変数の組み合わせは、運転挙動として現れ、次の指標で把握・評価します。これらは、プロセス設計と運転条件の妥当性を判断する手掛かりになります。
吐出部での樹脂温度(℃)
先端部の樹脂温度圧力センサーで計測する樹脂温度は、材料が受けた熱履歴を反映します。材料物性の変化、熱分解、反応の進行度を温度として表すもので、エネルギー投入状態の結果であり、各種指標の中でも特に重要度の高い指標です。
吐出部での樹脂圧力(MPa)
ダイス内流動の安定性を評価する指標。フィルター、スクリーンチェンジャー、ギヤポンプなど下流設備との圧力バランスの評価にも使い、圧力変動は吐出量の不安定化の要因とみなせます。樹脂圧力はスクリュ構成だけで決まるものではなく、先端のダイス形状や流路条件との組み合わせで圧力分布が形成されます。
比エネルギー(kWh/kg)
単位樹脂量あたりに材料へ実質的に投入された機械的エネルギーを表す指標。モーター出力を基準に、減速機・カップリング・軸受での機械的損失を差し引いた有効動力を求め、単位時間あたりの処理量で換算します。材料種やスクリュ構成が異なる条件間でも、処理量や回転数の違いを超えてエネルギー投入状態を比較できる共通指標として有効で、樹脂温度と並ぶ主要な指標です。
滞留時間 (min)
材料が投入されてから吐出されるまでの時間。スクリュ回転数・投入量といった操作変数に加え、スクリュ構成やL/D比の構造変数の影響を受けます。実際には材料が一様な時間で進むわけではなく、流動の分岐・合流やニーディング部での混練により、滞留時間には分布が生じます。この分布は、材料が受ける熱履歴のばらつきを反映します。
ULTnano15を用いた基礎実験
― スクリュ回転数・吐出量が樹脂温度・圧力に与える影響

スクリュ回転数や投入量といった操作変数の変化が、樹脂温度と樹脂圧力に与える影響を確認するため、小型二軸混練押出機による実験を行いました。装置は循環型小型二軸混練押出機 ULTnano15 を使用し、操作変数の影響評価が目的のため、循環パスは使わずワンパス方式で連続押出しました。
実験概要
実験装置:ULTnano15 循環型小型二軸押出機
スクリュ径:15㎜
L/D:15 ワンパス方式
スクリュ回転数:1000rpm
投入材料:ENEOS NUC DFDJ-0964
温調条件:C1 : 120℃、C2・D : 160℃
回転数・吐出量:サンプル毎により異なる
※ 材料吐出部に樹脂温度圧力センサーを設置
運転条件 / 回転数・吐出量・Q/N
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | |
| 吐出量 g/hr | 500 | 2500 | 5000 | 1500 | 1500 | 1500 | 300 | 1500 | 3000 |
| 回転数 rpm | 100 | 500 | 1000 | 100 | 500 | 1000 | 300 | 300 | 300 |
| Q/N | 5C | 5C | 5C | 15C | 3C | 1.5C | 1C | 5C | 10C |
①/②/③の比較:同Q/Nの3水準における充満率の違い
④/⑤/⑥の比較:異Q/N(吐出量一定)の3水準における充満率の違い
⑦/⑧/⑨の比較:異Q/N(回転数一定)の3水準における充満率の違い
運転条件 / スクリュフォーメーション

運転結果/樹脂温度・樹脂圧力
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | |
| 吐出量 g/hr | 500 | 2500 | 5000 | 1500 | 1500 | 1500 | 300 | 1500 | 3000 |
| 回転数 rpm | 100 | 500 | 1000 | 100 | 500 | 1000 | 300 | 300 | 300 |
| Q/N | 5C | 5C | 5C | 15C | 3C | 1.5C | 1C | 5C | 10C |
| 圧力 MPa | 1.0 | 1.9 | 2.3 | 1.9 | 1.3 | 1.1 | 0.6 | 1.5 | 2.5 |
| 温度 ℃ | 165 | 167 | 169 | 165 | 167 | 169 | 166 | 166 | 167 |
実験結果
同一のQ/Nで比較すると、回転数および吐出量の増加に伴い、樹脂温度・樹脂圧力はいずれも上昇しました。Q/Nが一定でも、回転数と処理量の絶対値が増えることで温度上昇が生じたとみられます。
吐出量を一定として回転数を上げた場合は、樹脂温度は上昇する一方、樹脂圧力は低下しました。回転数の上昇でせん断速度が増え、せん断発熱による温度上昇が進むと同時に、材料の粘度低下によりダイス部の圧力損失が減ったためと考えられます。
回転数を一定として吐出量を増やした場合は、樹脂温度・樹脂圧力がともに上昇しました。処理量の増加で充満率が上がり、せん断応力と圧力勾配が増したことに加え、単位時間あたりに投入される機械的エネルギーが増えたためと考えられます。
以上から、樹脂温度・樹脂圧力は単一の操作変数で一義的に決まるのではなく、回転数と吐出量の組み合わせ、すなわち充満状態とエネルギー投入状態の相互作用で形成されることが分かります。
※詳しくは「二軸押出機の充満率・滞留時間」の解説ページもご参照ください。
樹脂温度上昇に対する支配因子とスケールアップ時の留意点

この結果を見ると、樹脂温度に最も影響を与える操作変数は、主にスクリュ回転数だと整理できます。回転数が上がると、せん断速度が直接的に増加し、せん断発熱が大きくなって樹脂温度も上がりやすくなります。実際、吐出量やバレル温度をほとんど変えなくても、回転数を上げただけで樹脂温度が大きく変わることは珍しくありません。
スケールアップ時には、この影響がさらに見えやすくなります。スクリュ径が大きくなると、同じrpmでもスクリュ外周部の周速は上がります。つまり小型機と同じ回転数で運転していても、実際には材料が受けるせん断速度は大きくなっています。そのため、ラボ機で問題なかった条件をそのまま大型機へ持っていくと、「想定以上に樹脂温度が上がる」「材料が焼ける」といった現象が起きることがあります。
※詳しくは「二軸押出機のスケールアップ」の解説ページもご参照ください。
二軸押出プロセスにおける評価指標としての比エネルギーの位置づけ
二軸押出機の運転評価では、データを取得しやすい樹脂温度や樹脂圧力がよく使われます。これらは重要ですが、どちらも「最終的にどういう状態になったか」を見ているもので、材料が押出機内部でどのような機械的作用を受けたかを直接は示しません。
二軸押出の混練は、スクリュ回転で材料に与えられるせん断・伸長の履歴に強く依存します。これらの機械的作用は、必ずしも温度や圧力の変化として表れるとは限らず、特に溶融が十分進んだ後の領域では、混練状態の違いが温度・圧力の差に現れにくくなります。このため、温度・圧力だけの評価では、内部で生じている混練状態の差を見落とす可能性があります。
そこで効いてくるのが比エネルギーです。比エネルギーは単位質量あたりに投入された機械的エネルギーを表し、材料が内部でどの程度の機械的負荷を受けたかを示します。回転数・吐出量・スクリュ構成が異なる条件同士でも比較しやすく、「どれだけ機械的作用を与えたか」という視点でプロセスを整理できます。
まとめ
二軸押出機のプロセス挙動は、運転中に変更できる操作変数(ソフト的条件)と、装置仕様として事前に決まる構造変数(ハード的条件)の組み合わせがつくるエネルギー投入状態に起因して現れます。その結果として、樹脂温度・樹脂圧力・比エネルギー・滞留時間といった指標が現れ、材料の溶融状態や混練状態を定量的に評価することができます。
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