【技術情報】二軸押出機の分散分配混合

技術情報2024.10.18

押出機における混練作用は、ポリマーを可塑化・溶融し、異種ポリマー、フィラー、添加剤を加え、均一な混練物を得る操作です。その混練時に起こる状態は分散混合と分配混合の2つの混合形態に分かれます。フィラーやポリマーゲルを細かく分散させる分散作用と混練物を混ぜて組成の均一化を行う分配作用の二種類の作用があります。この二つの作用がバランスよく適切に行われることにより、異種ポリマーやフィラーを加えた均一な混練物を得ることができます。

 

分散と分配

分散作用

分散作用は、せん断や伸長などの力を加えることで混練物を細かな粒子に分散させる作用です。この作用により、混練物内の粒子径が小さくなります。例えば、凝集力の強いフィラーや、一体化しやすい物質を解きほぐすためには、強力な分散作用が必要となります。

 

ポリマーを混ぜる過程で、マトリックス樹脂と混ざりにくい液体や、固まった固体粒子を細かく分ける混合方法を「分散混合」と呼びます。この場合、内部で発生する応力の影響が、内部のひずみよりも重要な役割を果たします。つまり、固体粒子の塊や液滴を効率よくマトリックス内に散らすためには、混ぜるときの流れのコントロールが大切になります。

 

高分子ブレンドやコンパウンドの製造において、液滴の分裂、フィラーの凝集破壊、繊維の解繊などは、分散混合が不可欠です。分散混合は、異なる材料を微細化し、均一に分散させる工程であり、これにより製品の均質性と性能が向上します。

 

分配作用

まず、分配作用は混練物をかき混ぜて、組成や物性のばらつきを抑える作用です。分配作用は伸長、分割や再配列することであり、系全体が複雑に流動していく過程です。分配作用を促進する流れは、分流と合流ともいえる事ができます。流体における異種材料やフィラーの位置が変わる位置交換が行われ、その分流と合流が積み重なっていくことにより、分配作用が進むメカニズムです。

 

2種類の粘り気のある液体を混ぜる際、1つの成分がもう1つの成分の中に液滴や層として分布している状態を「分配混合」と言います。このとき、ひずみを加えることにより、成分同士の境界面が広がり、液滴や層が小さく・薄くなり、より均一に混ざった状態になります。

 

特にガラス繊維や炭素繊維など、形状を維持して機能を発現させるフィラーの場合、分配混合がとても重要になります。これらのフィラーは、材料内に均等に分布させることが重要であり、そのため分配混合が有効です。

 

せん断と伸長

せん断流動と伸長流動は、流体や材料が力を受けて変形する際の異なる流動形態を説明する重要な概念です。特に、粘性流体やポリマーなどの非ニュートン流体を扱う際に注目されるものです。物質の流れは大きく分けて、せん断流動場伸長流動場の2つに分類されます。下の図では、それぞれの流動場のイメージが比較されています。

せん断流動

せん断流動とは、物体の異なる層が互いに平行に動くことで生じる流動のことです。このとき、隣り合う層同士が異なる速度で移動し、層の間に「せん断応力」が発生します。物体が滑るように変形していく動きです。せん断流動では、流体や材料の異なる層が異なる速度で動きます。そのため、せん断流動における速度分布は速度勾配を持つのが特徴です。

伸長流動

伸長流動は、流体が引き伸ばされることで生じる流動です。材料が一方向に伸びるか、複数方向に引き伸ばされ、体積変化を伴う流動形態です。この流動では、せん断流動とは異なり、材料の変形が主に引き伸ばしの方向に集中します。伸長流動では、流体や材料が引き伸ばされるため、材料全体が一方向に対して広がっていきます。この場合、速度分布は一様な速度変化が見られます。

単純せん断と単純一軸伸長

上の図では、せん断流動場でみられる単純せん断と伸長流動場でみられる単純一軸伸長を表しています。伸長流動においては、一軸方向の一軸伸長だけでなく、平面や二軸方向への伸長の様式があります。それぞれの流動様式によって分散効率は異なります。

 

チップクリアランス部での流動状況

押出機内の材料の流動も、「せん断流れ」と「伸長流れ」に分けられます。一般的には、二軸押出機ではせん断流れが主に寄与すると考えられています。しかし、伸長流れも分散混合に重要なとても重要な役割を果たすため、せん断流れだけでなく伸長流れも十分に考慮する必要があります。

 

チップクリアランスと呼ばれる、スクリュとバレルの間や2本のスクリュ間の最も間隙の小さい場所における材料へのせん断流動や伸長流動が重要な要素となります。このようなチップクリアランスを通過することで、材料に高いせん断応力が繰り返し加えられ、分散混合が進行します。一方、分配混合には、複雑な流動場を生み出すための複雑な形状のエレメントが使用されることがあります。これにより、混練物がかき混ぜられ、組成の均一化が促進されます。

【技術情報】二軸押出機のチップクリアランス

 

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