【技術情報】二軸押出機のチップクリアランス|テクノベル
チップクリアランスとは

押出機の溶融混練は、チップクリアランスを通過することによるせん断応力の作用が主要素であると考えられています。チップクリアランスとは、スクリュ山頂部とバレル内面、もしくは、一本のスクリュ山頂部と他方のスクリュ間のクリアランスのことを意味します。押出機における溶融混練において、この最適なチップクリアランスの設計が重要です。
せん断応力

小さなクリアランスでは、よりせん断応力がかかりやすくなります。これにより分散性が向上しますが、材料によっては熱劣化や局所的な発熱を引き起こす可能性があります。大きなクリアランスは、せん断応力が減少するため、粒子やフィラーの分散が均一になりにくくなる傾向があります。
塑性変形・粘性消散

二軸押出機の場合、樹脂の溶融においては、押出機のバレルに設置されるヒーターからの伝熱だけでなく、押出機の混練による塑性変形による発熱や粘性消散による発熱、摩擦による発熱の影響が大きいです。塑性変形は、流動中の材料がクリアランス部で大きなせん断応力を受けることで発生します。チップクリアランスが小さくなる場合、塑性変形による発熱や粘性消散による発熱も大きくなります。
セルフクリーニング性能

チップクリアランスが小さくなると、バレルやスクリュに付着した材料を効率的にかきとることができるため、セルフクリーニング性はよくなります。セルフクリーニング性が良くなることで、樹脂の長時間の付着による熱劣化を防止することやバレルからのヒーターによる伝熱効率を上げることができます。
流入流量

チップクリアランスが大きいと、そのクリアランスへ流入する材料は多いです。一方で、チップクリアランスが小さいと、クリアランスへ流入する材料は少なくなります。
滞留時間分布への影響
チップクリアランスは、材料が押出機内に滞在する時間のばらつき、すなわち、滞留時間分布にも影響を与えます。チップクリアランスが大きい場合、スクリュ山頂部を乗り越えて後方へ漏れる流れが増えるため、材料の一部が行き戻りを繰り返し、滞留時間のばらつきが大きくなります。また、バレルやスクリュにかきとられずに残った付着物やコンタミは、本来の流れに乗らないまま長時間機内にとどまり、熱劣化によるゲル化や黒点、材料替え時にいつまでも前の材料が抜けないといった品質トラブルの原因になります。
チップクリアランスが小さい場合、スクリュ山頂部での行き戻りの流れが減り、セルフクリーニング性の向上によって長時間滞留する樹脂も少なくなります。そのため、滞留時間分布は狭くなります。滞留時間がそろうことは、熱履歴の均一化や材料替え時間の短縮につながり、品質の安定化という観点では大きなメリットです。
まとめ
チップクリアランスは、狭くすれば、せん断が強まり、凝集体やフィラーの分散が進みます。さらに材料の漏れ流れや、かきとり残しが減ることにより滞留時間分布が狭くなり、熱履歴の均一化、黒点やゲル化の抑制など、品質を支える多くの項目が同じ方向に改善します。このようにチップクリアランスは基本的に小さい方が有利な設計要素とも言え、クリアランスを小さく保てる同方向完全噛合型の二軸押出機が、混練分野で主流となっている理由もここにあります。ただし、狭くするほど塑性変形や粘性消散による発熱で局所温度が上がるため、熱やせん断に弱い材料では劣化のリスクはあります。
チップクリアランスは、こうしたバランスを踏まえて各メーカーが機械ごとに設計しているベースの寸法であり、ユーザーが運転条件のように日々調整するものではありません。それでも、このチップクリアランスの設計において、何が起きているかを理解しておくことは大切です。
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