【技術情報】二軸押出機のスクリューとスクリューフォーメーション|テクノベル

押出コラム2025.03.12

はじめに


二軸押出機のスクリュ設計やプロセス設計は、外から見る以上に複雑です。実際の押出現場では、材料特性、スクリュ構成、回転数、吐出量、温度設定といった多くの要素が同時に絡み合い、そのわずかな違いが樹脂温度や混練状態、製品品質に影響します。一方で、実務的な押出条件やスクリュフォーメーションには、各メーカーや現場ごとの経験やノウハウが強く反映されます。そのため、実際の設計現場では、詳細な構成や条件そのものよりも、「なぜその構成になるのか」という考え方や、押出機内部で起きている現象への理解を深めることが大切です。

本ページでは、特定の処方条件や具体的なノウハウを解説することを目的としているわけではありません。二軸押出機の内部で、材料がどのように搬送され、溶融し、混練され、圧力が形成されるのか。その際に、L/D 比、スクリュ溝深さ、エレメント構成、充満率といった要素が、どのような役割を持っているのか。そうした「押出プロセスの基本的な見方」を整理することを主眼にしています。

二軸押出機におけるスクリュー設計の重要なポイント

L/D 比 (プロセス長)

L/D比はスクリュの長さ(L)とスクリュの外径(D)の比率を示し、押出機の仕様において重要な指標です。押出機を検討する際に、まず確認される主要仕様の一つでもあります。L/Dが大きくなるほど、材料は押出機内部を長い距離移動することになります。その結果、混練・分散・反応・脱揮といった各工程を、より段階的に設計しやすくなります。特に反応押出のように、材料へ一定の滞留時間を与えたいテーマでは、長いL/Dが有利になることがあります。

一方で、L/Dを長くすると、単純に「性能が良くなる」というわけでもありません。プロセスが長くなる分、材料が受ける熱履歴やせん断の履歴も増えるため、樹脂温度上昇やエネルギー消費の増加につながることがあります。材料によっては、滞留しすぎることで劣化や焼けの原因になるケースもあります。

実際のコンパウンド用途では、L/D=40〜60程度が選ばれることが多く、比較的バランスの良い領域と言えます。一方、反応押出のように長時間の反応や滞留を必要とするテーマでは、L/D=100以上の超ロング機が採用されることもあります。逆に、そこまで長いプロセスを必要としない押出成形では、L/D=40以下の比較的短い機械が選ばれるケースもあります。

L/D=150のテクノベル製小型2軸押出機


D/d 比 (スクリュ溝深さ)

D/d比は、スクリュ外径(D)と谷径(d)の比率を表します。簡単に言えば、スクリュ溝の深さに関係する指標です。D/d比が大きい場合、スクリュ溝が深くなるため、バレルとスクリュの間に確保される空間容積は大きくなります。そのため、搬送能力や充満許容量は高くなりやすい反面、材料へ与えられるせん断は弱くなりやすい傾向があります。

逆に、溝が浅い場合は空間容積は小さくなりますが、材料へ強いせん断を与えやすくなります。実際の現場でも、深溝タイプは搬送寄り、浅溝タイプは混練寄りのような感覚で使い分けされているケースもあります。

スクリューエレメントの条数

二軸押出機にはさまざまな種類のスクリュエレメントが使用されますが、最も一般的なのは二条ねじのエレメントです。搬送性と混練性のバランスが取りやすく、多くのコンパウンドテーマで標準的に使用されています。

一条ねじエレメントは、バレル内の空間容積が大きくなり、低せん断速度で搬送が行われるため、特にかさ密度の低い材料や、温度やせん断に敏感な材料に適しています。これにより、材料の品質を保持しながら安定した搬送が可能となります。

三条ねじエレメントは、ねじ溝が浅いため、同じ回転速度でも高いせん断力を材料に与えることができます。この特性により、せん断を必要とする材料の加工に適しており、また、せん断作用が向上し、材料の可塑化や溶融を促進する効果があります。特に高いせん断エネルギーが必要なプロセスや、迅速な混練・溶融を求められる場合に有用です。

スクリューフォーメーションの重要性

スクリューの構造について

二軸押出機のスクリュは、複数のスクリュエレメントをシャフトへ組み込んで構成する、エレメント方式を採用しています。この構造の特徴は、スクリュ構成を自由に変更できる点にあります。例えば、搬送を増やしたい、混練を強くしたい、滞留を長くしたい、圧力を形成したいといった目的に応じて、エレメントを入れ替えながらプロセスを設計できます。

実際、同じ押出機でもスクリュフォーメーションを変えるだけで、まったく別の挙動になることがあります。現場では、「押出機そのものより、スクリュ構成のほうが性格を決めている」と感じる場面も少なくありません。

スクリュエレメントは、さまざまな機能を担っています。たとえば、混練エレメントは材料を均一に混ぜるために設計されており、搬送用のエレメントは材料を前方へ移動させる役割を果たします。これにより柔軟なプロセス調整が可能であり、エレメントを交換・配置することにより、処理条件に応じてスクリュの設計をカスタマイズできます。これにより、特定のプロセス要件に最適化されたスクリュフォーメーションを構築できます。

それぞれのエレメントの特徴的な機能

スクリュエレメントには、搬送能力、充満、滞留、せん断作用といったさまざまな機能が求められます。例えば、右ねじれ形状のエレメントは前進搬送を行い、左ねじれ形状のエレメントは逆戻りの機能を持ちます。また、ねじれを持たないニュートラルエレメントは搬送能力を持ちません。

さらに、充満率や滞留時間に関しても、各エレメントによって機能が異なり、特に混練部の圧縮の影響を受けるため、エレメントの組み合わせにより、最適な性能が発揮されます。せん断作用についても、エレメントの組み合わせと設計によって大きく異なるため、目的に応じスクリュフォーメーションの最適化が求められます。

混練の役割を持つニーディングエレメントにおいては、ディスクの厚みやねじれ角度、段数、チップクリアランスの隙間の大小による、分配混合や分散混合といった混練性能に与える影響はとても大きいです。

このように、二軸押出機のスクリュ設計は、材料の特性や求められるプロセスに応じて、さまざまな要素が調整されます。スクリューエレメントの選定は、最終的な製品の品質や生産効率に直結するため、深い知見や多くの経験が必要であり、慎重な設計が必要です。

スクリューフォーメーションの重要性

均一な分散が必要なテーマでは、混練部の設計が製品品質を大きく左右します。例えばナノフィラー系では、分散不足がそのまま物性ムラとして現れることもあります。そのため、単純に「混ぜる」のではなく、どの位置でどれだけせん断を与えるかが重要になります。

一方で、熱に敏感な材料では、強いせん断が逆効果になることもあります。必要以上に温度を上げず、できるだけ穏やかに流す構成の方が安定するケースも少なくありません。

また、生産性とのバランスも常に問題になります。混練を強くすれば品質は安定しやすくなりますが、吐出量やエネルギー効率には影響が出ます。逆にスループットを優先すると、今度は混練不足が出やすくなります。現場では、「理論上の最適解」というより、「この材料ならどこで折り合いをつけるか」を探している感覚に近いかもしれません。

各テーマに合わせたスクリューフォーメーション

均一な混練や分散を求められる場合(例: ナノ材料や複合材料の製造)

混練部にニーディングエレメントやミキシングエレメントを設計することが最適です。これらは強いせん断力を加え、均一な分散分配や高い混練効率を提供します。ディスクの厚さやチップクリアランスが混練効率に大きな影響を与えるため、正しい配置が重要です。

長時間の滞留が必要な場合(例: 反応押出や長時間反応が必要なケース)

L/D比が大きい長いプロセス長の押出機と、滞留時間を長く保つことが可能なエレメントを選定します。L/D比を大きくすることで、材料がスクリュ内でより長い時間滞留し、反応や混練が充分に行われます。また、滞留時間を長くすることで、より高い反応効率を得ることができます。

脱揮押出の場合

脱揮押出では、充満率のコントロールが非常に重要になります。ベント部付近で高充満状態になると、揮発成分の逃げ場が失われ、ベントアップや樹脂吹き上がりが発生しやすくなります。一方で、脱揮ゾーンに適度な自由表面を形成できるよう低充満領域を設計すると、揮発成分が抜けやすくなり、安定した脱揮につながります。そのため、脱揮工程では単純な混練性能だけではなく、圧力形成、開放領域の作り方まで含めたスクリュフォーメーション設計が必要になります。

スクリュ構成による充満状況の設計

二軸押出機の充満率・滞留時間

実際の二軸押出プロセスでは、スクリュ設計そのものによって、押出機内部の充満状態や滞留状態をある程度、意図的に作り分けることができます。例えば、搬送能力の高いフルフライトエレメントを主体に構成すれば低充満寄りになりやすく、逆にニーディング部や逆ねじエレメントを組み合わせることで、高充満領域や滞留を形成しやすくなります。それぞれのテーマによって求められる充満状態は異なるため、スクリュフォーメーション思想のそのものが、プロセス設計の一部と言えます。

さらに、実際の押出挙動はスクリュ構成だけで決まるわけではなく、吐出量と回転数といった運転条件の組み合わせによっても大きく変化します。同じスクリュ構成であっても、回転数を上げれば充満率が下がり、逆に吐出量を増やせば充満率が高くなるなど、材料の滞留状態や流れ方はかなり変わります。現場でも、「混練が足りない」「温度が上がりすぎる」「脱揮が安定しない」といった現象を追っていくと、最終的に充満率設計やQ/Nの考え方へ行き着くケースは少なくありません。

テクノベルでは、小型二軸押出機ULTnano15を用いて、Q/Nと充満率の関係を実際に可視化した基礎実験も行っています。理論式だけでは見えにくい、押出機内部で起きている現象について、より感覚的に理解しやすい内容になっています。

※詳しくは「二軸押出機の充満率・滞留時間」の解説ページもご参照ください。

まとめ

二軸押出機のスクリュ設計では、L/D 比、D/d 比、エレメント条数、スクリュフォーメーションなど、多くの要素が同時に関係します。それぞれが独立しているわけではなく、搬送、混練、滞留、発熱が互いに影響し合いながら、最終的なプロセス挙動が決まります。実際の押出現場では、「この条件なら必ずうまくいく」という単純な答えはほとんどありません。同じ材料でも、求める品質、生産量、熱履歴によって最適解は変わります。

だからこそ、二軸押出機のスクリュフォーメーションの設計はとても面白い技術分野です。単なる機械仕様ではなく、材料の流れ方や反応のさせ方を設計する感覚に近く、そこにエンジニアごとの経験や思想がかなり色濃く出る分野だと思います。

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株式会社テクノベル ─ 押出機の専業メーカー

大阪に本社を構える押出機の専業メーカー。創業以来、押出技術の革新に取り組み、世界で初めて水平方向多軸押出機を開発。4軸・8軸の混練押出機をさまざまな分野へ供給しています。従来の二軸混練押出機においても、世界最小径6mm径の実験機からベストセラーの15mm径、量産向けの大型機まで、幅広いラインナップを展開。本コラムでは、現場で培った押出技術の知見を体系的に発信しています。

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